数学と結婚
先日、大学時代の友達の結婚式に行ってきた。
彼女は大学に残って先生をしている。数学の准教授である。
ゆえに、結婚式の恩師からのスピーチは、彼女の指導教官である教授。
大学友人として出席している我々にとっても、馴染みのある先生。
我々は、とても先生を心配していた。もともと声も小さく、震えがちな先生。
披露宴の前に少し話した先生からはビリビリと緊張が伝わってきていた。
これは、心配。
同じテーブルに座っている我々皆が、口には出さないが、同じことを思っていた。
加えて、新郎側の上司は、大きな声でハキハキと笑いも取りつつ小慣れた様子でスピーチを終える。続いて先生。
これは物凄くやりずらい。
静かに席を立った先生は、いつもの調子で小さな声で話し始めた。
新婦である彼女に初めてあったときの話からポツリポツリと。
そして、ひと段落したところで、先生が次の話題へ移った。
’それでは、彼女の研究内容について説明します。
彼女は、非線形波形について研究しています。
非線形とは、線形に非ず。と書きます。’
と、大学の講義と変わらない内容になってきたところで、
不安が的中したのではないかと、私は物凄く不安になっていた。
私の気持ちなんて、先生は知る由もなく、ゆっくりと話続ける。
’線形とは1+1=2の世界です。
非線形とは1+1=0.5や3になる世界のことを言います。’
会場のみんなの頭の上に、見えない「?」が見えたのか、先生は具体例を出します。
’世の中は、非線形である事象の方が沢山あります。自然なことです。
サッカーチームでスター選手を集めても、11倍にはならないでしょう。
反対にそうでないチームでも、連携が取れていれば、より強くなる。
みなさん知っての通り、スポーツの世界ではよくあることです。’
そして先生は続ける。(中略)
’彼女の研究しているものは、こういった世界のものです。
どうか二人も、1+1=3にも4にもなるような、非線形の素敵な結婚生活を送ってください。’
と、慣れないお辞儀をして先生は静かに席に戻った。
「なんだか勉強になるスピーチでしたね。」と、式場の司会の人は、言っていたけれど、あとで同じテーブルのみんなが、
何だかジンときたね。
と自分と同じことを思っているのを聞いて、全然真面目に数学もやっていなかったけど、少しはやってて良かったな。と静かに思った結婚式だった。
式自体も、とても素敵で(ドレスは新婦のおばあちゃんの手作り!)、とてもいい式だった。彼女にこれからも幸が多いことを祈ります。
ということでこちらでブログ始めます。